八重山友禅染めの工程

 八重山友禅作家 ネイ

 八重山友禅染めとは



八重山友禅染め(やいま ゆうぜんぞめ)Ⓡ

 江戸は元禄のころ、絵師「宮崎友禅」によって確立されたのが「友禅染め」です。京都で完成された「京友禅」は、金沢に伝わり華やかな「加賀友禅」として育ち、やがて江戸に下り「江戸友禅」として粋な紋様を作り出していくこととなります。 江戸友禅を継承したNeiは、八重山の島々の樹木から色をもらい、手描き友禅染めの技法で南の島々の情景を染めることを思いつきます。それが「八重山友禅染め」のはじまりです。

美ら〜布(ちゅらーふ) Ⓡ

 「八重山友禅染め」の技法で染められた絹地を「美ら〜布」Ⓡと呼びます。絹地に染料で描かれ、下絵、糸目、色差し、蒸し、水元、乾燥と、数多くの工程を経て生み出される友禅染めは、多彩な色使いながらも優しく温かみのある表情をたたえています。ひとつひとつ手描き友禅染めの技法で描き上げた南国楽園の情景から、温かく爽やかな風が感じられます。

友禅アート(ジクリープリント)

 絹に描かれた友禅染めは、非常に色がうつろいやすく強い陽射しの中で退色します。これを防ぐために、八重山友禅染めをジクリープリントの版画作品に仕立てました。それが「友禅アート」です。
特殊なインクは、「手書き友禅染め」の持つぼかしと布目の独特な雰囲気をあますことなく再現。50余年の年月にもほどんど退色せず、いつまでも完成時の鮮やかな色調を保ってくれます。だから安心していつまでもお部屋に飾っていただけます。ジクリープリントは木版画やリトグラフ、シルクスクリーンと同様に版画技法のひとつとして高く評価されています。

八重山友禅染めを創始したNei

 Neiは、手描き友禅で作品を創り出す数少ない作家のひとりです。南の島々を描くきかっけになったのは沖縄、八重山諸島でした。ヤンバルの深い森の息吹に心をうたれ。石垣島の米原ビーチの小さなサンゴに感激し、竹富島のコンドイビーチの色とりどりの魚に魅せられ、西表島のマリウドの滝の美しさに立ちつくし、南国特有の大きな自然にあこがれを持つようになったのです。以来スケッチとカメラをたずさえて、タヒチに遊び、フィジーを泳ぎ、バリを歩き……、時間をみつけては南の島々を訪れました。
「ほら、風に色が感じられる」
「あ、花の色が光で変わる」
心に写る情景を描きたいと思うのは、ごく自然のなりゆきでした。
「光を感じたいたい」「風を感じたい」
数多くの工程を経て染められる友禅の伝統の技法は、南国の風と光をみごとなまでに捉え、観る者の心を楽園へと解き放ってくれます。強い光に踊る木々の緑。微妙に変化する海の青。何時間眺めていても飽きることはありません。 Neiはいまも、スケッチブックをたずさえて南の島々を歩いていることでしょう。